2021/02/07 08:58



2021年、いやはや、もう作業着しか着る気がしないですな!




かく言う私も、かつて明治通りあたりをうろついて万単位の弱っちい服を購入していた時期があります。

あの頃は、やられてしまっていたんですね。渋谷区のキラキラ感に。まさに目を覆いたくなる、絵にかいたようなお上りさん。

もちろん、明治通りでも探せば作業着は買えるでしょう。しかし恐らく、その作業着ってのはスタバで最新のマックブックを用いてデザインされたような、自分はバリッバリホワイトカラーのくせに「作業着っていいよね、あの質感とか」と宣うデザイナーあたりが手掛けたものである可能性が濃厚です。

黒王号に跨る、帝王ワークマンさん(敬称略不可)が渋谷区内にまさかの0店舗! という事実もその推論を後押しします。

そのままの 君でいて


古着を扱い始めて分かったことですが、作業着メーカーというのはだいたい各国に強い業者がいくつかありまして、中国産で安けりゃーいいやぁー! それ発注ぅぅぅ、とりゃ~っ! てな具合で作っているわけでもない、ということです。

もちろん中国産のものも少なくはないのですが、それでも発注元のヨーロッパの会社のタグがしっかりしていたりと、危険かつ責任重大な現場作業にも使われることもあるため、実用本位で決して安い作りにはなっておりません。そのあたりは若干、発注元の作業種類にも依るところですが。

いまや「何の変哲もない」という枕詞を何の迷いもなく着けることができるジーパンも、元をたどれば鉱夫の方々が愛用したもので、普及した理由の大きな一つに「耐久性」という要素は間違いなく入っているでしょう。

私は原理主義者というわけではありませんので、ジーパンは耐久性に優れていなければならない、という御託を申すつもりは毛頭ありません。しかしその「ファッションアイテムとしてのファッション性」とでもいいましょうか、そこに取り込まれてしまうともう耐久性、実用性という機能は置き去りにされてしまうのが、何だか切ない。

ここ数年、「スタイリッシュ作業着」的なものが新庄選手をモデルとして展開されているのを見かけたりしますが、その方向性、つまりファッションアイテムとしてもイケる感、なんて全く要らないのではないでしょうか、むしろ逆効果。

そのままの佇まい、ただただ作業着以上でも以下でもない、凛としたシルエットに人は惹かれるのであります。

そんな思いを胸にコロナの嵐吹き荒れるこの冬、氷点下の気温にもめげず、また時には私の入店時に出来上がる、あの走れメロスの悪い王が如き不機嫌なポーリッシュババァたちの眉間の皴にも心折れず、選び抜いた作業着たちをご紹介!(中にはたまに感じのいい笑顔で迎えてくれるババァもいます、念のため) 全て未使用タグ付きで、心ほっこり華丸大吉、いやむしろプーアンドムー。


では見ていきましょう。



Case 1.ノルウェーの製紙業者 Norske Skog バックプリントあり オレンジ色


一件目は産油国であるノルウェーから。知りませんでしたが、この Norske Skog という製紙会社は超巨大企業でした。

製紙業界で連想することと言えば、王子製紙の坊ちゃんがカジノで何億も使い込んだことのみで打ち止めの私です。金券としての価値を持つ以前に、紙幣っていうのは紙であって破いたりできるんだよなあ、という普段忘れがちなことを思い出させてくれる話ではありますが。

当然ですが用途に応じて作業着にも色々と種類があるわけですが、この70年代を思わせるかのようなショッキングオレンジは、着ているつもりでも飲み込まれてしまいそうな煌めき。ここまでの良発色である必要がある現場なのでしょうか、製紙工場というのは。


(バックプリント)

企業ロゴってのも結構面白く見るのですが、この矢印のようなものは、紙の原材料である木を表している、のではないでしょうか。右側の下向きのものはよく分かりません。ロゴデザイナーみたいな方が、バランスを取るために添えたのか。

素材はナイロンとコットンが50%ずつで、このテロテロ感の創出にはナイロンが一役買っております。耐久性充分、そして雨にも強そう。

前面はこんな感じ。ノルウェー語なのか、筆記体なのでよく分かりませんが最初の一行は企業名の Norske Skog でよいと思われますが、あとはほんとに不明です。こんな時のために中学校からノルウェー語、もっとちゃんとやっとけばよかったなぁ!


そういうよく分からないところも、異国作業着の魅力の一つであります。このタグと言いますか紙片も、プロ、業者用の雰囲気を相当醸していていい感じ。

日本で着用時気づかれるとしたらノルウェー人、もしくはノルウェー方面に明るい業界関係者くらいでしょうから、相当低い確率でありましょう。企業名でアピールするラインが断たれているとしたら、もう後はご購入者様とこのオレンジ色の真っ向勝負。

詳細は製品ベージにてご確認下さい。





Case 2. ノルウェー語のタグ付きの渋いブルーのやつ

何だお前、またノルウェーかよっ と思われるやも知れませんが、これは私が使おうかほんとに迷いに迷ったものです。激お勧め。



企業ロゴ等はありませんが、このシルエットの良さでもうお釣りがジャラジャラ。結局は素材の良さというのが最後にモノを言う、と改めて教えてくれる、そんな感じ。



洋物作業着によくある、立派な体躯の方でも問題なく着用できるようなずんぐりむっくりXXXL、みたいなことはなく日本基準でもM相当なので、非常に使いやすそうです。

素材感は、おそらくですがナイロンとコットン1:1か2:3くらいじゃないかという感じです。記載なしのため不明。とにかくこれはノルウェー語のタグということくらいしか情報がつかめませんでした。

これぞ良質作業着という、作業着感を満喫できる一品。高円寺あたりだけでなく、むしろ洒落乙なとこの方がいけるかもしれません。





Case 3. ポーランドの暖房設備会社のやつ 赤

ようやくノルウェーから、スカンジナビア半島からヨーロッパ大陸に戻ってまいりました。ポーランドの相当地元密着型、というか業態からしてそうならざるを得ないのでしょうが、チェコとの国境近くで暖房設備のおそらく設置等を行っている会社のロゴ入り作業着。赤。

(前面。着用時右袖に反射材あり)



(背面に会社ロゴ)

私ども古着屋DANKEMAN、日本ではまず被ることはないものをお届けできるという喜びに堪えません。まさに古着屋冥利。

まあこの世界、絶対なんてことはないわけですが、ポーランドのそんなにでかくない町で暖房を手掛けている会社の作業着なぞ、どこのセレクトショップのバイヤーが目をつけるのでしょうか。

タグの人型部分、身長は176とあり、これはおそらく推奨身長ではないでしょうか。そして、1998というのが製造年を表しているとしたら、そこそこ古いものになりますね。



(Case 4. フィンランドのエレベーター会社のやつ)

ノルウェー2、ポーランド1ときて最後にフィンランドと行きたかったんですが、こちらブログを書いてる間におかげさまでお買い上げいただきましたため、まあこんなのもありました、てな感じです。なかなかいい感じでした。北欧ものってなんでこう、よいんでしょうね。




作業着をどう使うか。これはもう我々の実存主義的本質をもって選べるという、心から、よい時代になったものです。

工場作業からカフェまでこれら作業着さえあればもうどこでも行けてしまいます。隠れ蓑でもあって、また主張でもあるという衣類。そんな万能選手をあなたのもとに、これからも届け続けます、オンライン古着屋DANKEMANでした。

末筆ながら、皆様、くれぐれも健康にはご自愛を。